合宿で免許をとっていたときの話。
友達がいないので、独りで、1番安い自炊コース(食事も掃除も身の周りのことは全部自分でするから安い)を申し込んだ。
引用元: http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1416365030/
キャリーバッグが女の子に当たるたびノースリは振り向いてアッ、サッセン…とソワソワしていた。
女の子はめちゃくちゃ嫌そうだった。
さっきも書いたがわたしは自炊コースなので、教習所が借りてるアパートに他の教習生と2人1部屋で暮らすことになっていた。
わたしと2週間共に過ごすかわいそうなガールはバスでノースリのキャリーバッグがガンガン当たっていた女の子だった。
と独自の世界観をブっこんできたので付箋と呼ぶ。
ノースリはサッキハ、サーセシタ…謝っていたが
付箋は「はー?^ ^」と首を傾げていた。
ノースリは許されたと思ったのか教習所に置いてある俺の空を嬉しそうに読んでいた。
1日目は学科が3つ、技能が2つあって、アパートには20時前に帰った。
付箋は一緒に食材買いに行こうと近所のスーパーに誘われた。
とりあえずわたしはお金があまりないので米だけ安いの買ってどうにかしようと思ってたのだが、
付箋はとりあえずめちゃくちゃ買う。
刺身とかケーキとかまで買ってた。飲み物を選んでいるとノースリに出会った。
ノースリは自炊コースではなくちょい割高の旅館コース。
起きたらご飯があって帰ってきたら掃除してある、かーちゃんが家にいるみたいなかんじ。
ノースリはかごいっぱいに酎ハイやらビールやらを詰めて満足そうにしていた。
ノースリ「ア、ウス。今から旅館の奴らと飲むんす。」
付箋「はー?男だけで?終わってんなー^ ^」
(旅館コースは男女ごとにわかれているので、ノースリがいる旅館は必然的に男だけ)
ノースリ「エーア、ジャ、付箋さんと>>1さんもきてくださいよ。」
付箋「はー?入れんやんけー^ ^」
付箋はさっさと会計を済まし、帰って行った。わたしもそそくさと5kgのやっすい米を抱いて帰った。
付箋は自分のサトウのご飯を買っていたので別にわたしの米が欲しかったわけじゃない。
米が炊けるまで付箋にいろんなことを訊いた。
お金持ってんのになんで自炊コースなのか、とか、どこ出身なのか、とか。
・20歳看護学生
・自炊コースなのは親が勝手に決めたから
・関西出身千葉住み
だった。みためは愛嬌のある黒木メイサって感じ。喋り方はアホっぽいが結構賢いようじ感じた。
付箋は買って来た惣菜を机の真ん中に置いてわたしにも食べさせてくれた。
付箋はもともとそのつもりで買ったらしい。
「わたし料理できんのよー^ ^」
とビールのみながら手早く後片付けをしていた。
その日はお風呂に入ってすぐ寝た。
次の日は9時から教習だったので8時くらいに起きると付箋がご飯を作っていて、
ベランダにはすでに洗濯物がほしてあった。
付箋「うんー^ ^」
付箋「ほんで>>1ちゃんイビキうるさいわー^ ^」
付箋は味噌汁とだし巻きを作ってくれた。おいしかった。
私「えー!付箋ちゃん料理できてるやんー!すごいー、ありがとうー!」
付箋「んー^ ^」
結論からいうと付箋はなんでも出来たし、
とても気遣いのできる人だった。
教習から帰るといつのまにかタイマーを設定しておいてくれたのか、
部屋はあったまってたし、米は炊きあがってた。
たぶん初日に出来合いの惣菜ばかり買ってたのは、
わたしが米しか買ってなかったから料理していいのか迷ってしまったからだと思う。
そしてノースリも入校日も一緒のこともあって、よく一緒に行動した。
しばらくすると、わたしはノースリが付箋のことが好きなんだと気付いた。
スタイルいいね、おしゃれだね、しっかりしてるね、等。
わたしは食べるの早いね、くらいにしか褒めてもらったことないのに。
付箋は「お前ほんまにトンキンもんかい、服だっさ^ ^」と容赦なかった。
もちろん建前上男子禁制のアパートだが、
他の部屋には普通に男子が来ていたし、教官も目をつむっていたとおもう。
その日の教習後、付箋は部屋でおつまみつくるわー^ ^
と言ってくれたのでノースリと2人でお酒を買いに行った。
あーやっぱ好きやったんやなー
とチャーシューみながらブヒブヒしてたら、ノースリはガンガンきた。
こいつは初日からガンガン来まくりである。
ノースリ「付箋さん、俺のことどう思ってるんすかね…」
ノースリ「付箋さん料理も出来るんすか…駄目なところあるんすかねあの人」
ノースリ「あー…>>1さん、俺らのこととりもってくださいよー。」
ノースリの好意を満更ではなく受け取っているように思えた。
わたしのまえではいつもニコニコしながらノースリの悪口を言っていた。
たぶんこの2人はすぐくっつくだろうなぁと薄々感じてた。
だが、わたしはいままで彼氏はおろか友達すらできたことのないような女である。
とりもち方がわからなかった。
アパートに戻ってから、普通に飲んでしゃべって、わたしはいつの間にか寝ていた。
目を覚ますと付箋はベランダで洗濯物を干していた。
わたしはいそいで手伝おうとすると
付箋「あー、ええよ^ ^昨日わたしら、>>1に迷惑かけたし。」
といってそそくさと家の仕事を終わらせ、教習所に行く準備を始めた。
わたしは昨日のことを全く覚えていなかったため、合点がいかないままその日の教習を終えた。
付箋は違うグループに入っていた。
ノースリは神社にいきたいらしいので、もう1人のペアと経路を考えていた。
教官「あ、ここ縁結びの神社やなー。お前好きな子いるんかー?」
ノースリ「あ、は、」
なるほどなー、とノースリのへったくそな運転に揺られながら経路案内しているとあっと言う間に目的地の神社についた。
ノースリが駄々こねたため、少しだけ停車してお守りを買いに行った。
わたしはこの神社にご利益があるのかわからないが美人になるお守りというのを買っておいた。
周りになんの建物もない広い農道を走っているとき、大きな揺れが起こった。
教官が緊急ブレーキを踏んで、エンジン切れ!!!
と叫んだ。
その時運転していたのは不幸にもわたしだったので、
オワァァァ!!と訳も分からず喚いた。
教官がわたしに乗り上げエンジンを切った。
電柱がフロントガラス手前に倒れて、エアバックが飛び出た。
東北地方太平洋沖地震が東日本を襲った日である。
どのくらいジッとしていたかわからないが、余震もまだおさまらないのに、教官は外に出た。わたしたちはひたすら伏せていたので、外の状況はわからなかった。
教官はすぐに帰ってきて、ずっと黙っていた。
ドアを開けて奇声を上げながらどっかに行った。
その時初めて外を見た。
目の前が地割れして、地面が大きくズレていた。
何本も電柱が倒れていて、遠くの方では火の手があがっていた。
教官がノースリをとっ捕まえて車内に帰ってきた。
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実際わたしたちのいたところは津波の被害からは免れた。
車はもう動かないし、ガソリン漏れてる臭いがしたのでとりあえず車内から出ることにした。
携帯もいつのまにか圏外になっていた。
街に戻ると、あらゆる建物が倒れていて、ところどころ火事。
もうとりあえず信じられなかった。ノースリはひたすら震えてた。
教習所は建物に少しヒビが入っている程度だった。
固定電話も携帯電話も繋がらない状況だったので、
教習に出ていた教官と教習生の安否がわからず、職員の方々は四苦八苦としていた。
電気もガスも水道も絶たれた状態でひたすら教習所でガタガタ震えながら待機した。
20時を回って、帰っていない教習生は6人、教官は4人になった。
併設の食堂にあった非常食を食べていると、やっと付箋が帰っていないことに気がついた。
>>37強すぎですね。阪神淡路は覚えてませんが、ひたすら泣いてました。
職員の方にきいてみると、付箋は山の方に行っていたかもしれない、とこたえた。
近くにいた教官が顔を真っ青にしていた。
教官「そのグループ、土砂崩れに巻き込まれたんじゃないか….?」
4月に入ってやっと地元に帰ることができた。
教習はもちろん中止になって、残りの分は返金。利用してたアパートは崩壊したため、荷物はほとんどどっかにいった。
仮免許はあったから地元の教習所で期限ギリギリになってやっと本免に合格した。
教習所にいる間、ノースリとはたまに話してたけど全然元気がなくて、話してて楽しくなかったのであんまり関わらなかった。まぁもちろんみんな元気なかったけど。
地元に帰るとき、ノースリと思いっきり握手して思いっきり抱き合った。死線をともにした仲間といった感じだった。
ノースリはさすがにノースリじゃなかったけど、タートルネックを着ていた。こいつは首に傷でもあるのだろうか。
ノースリはぽつぽつと教習所にいたときの話をし始めた。
わたしたちのアパートで飲んでいたとき、ノースリは付箋に
好きな人はいるか?と尋ねたらしい。
付箋は苦笑いしながら、酔っ払って爆睡している私の頬にキスをした、らしい。
付箋はわたしのまえではいつもテキパキニコニコしていたなぁ。
あれはわたしにアピールしてくれていたのかな、と自分が情けなくなった。
付箋は結局行方不明のままだった。実家の詳しい住所とか全然きいてなかったから墓参りにも行けず、供養もできていない。付箋との思い出も、アパートの下敷きになってしまった。
たまに病院で看護師さんをみると、ちょっと感慨深くなる。付箋も生きてたからいまごろテキパキ働く綺麗な看護師さんだったんだなぁ、と。
この話は終わりです。先月ノースリと会って、ちょいちょい書き溜めてました。
長々と付き合ってくださったみなさん、ありがとうございました。
>>46
胸が苦しいよ。
その教習所は再開してるの?
そうなら名簿とか残ってるかもよ
問い合わせましたが、個人情報なので…といわれちゃいました。
そっか、そのあたりはクールな対応なんだね。
教習所に事情を話してこちらの連絡先を
付箋の連絡先に送ってもらうのはどうかな?
ノースリとお墓まいりに行けるように
お祈りしてるよ
ありがとうございます。
あまり盛り上がりがなくてすみません。
そんな事いいよ~。
ただのチャライ恋愛ものだろうと思ってたから
不意を突かれて号泣しちゃったよ
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