コンビニ店長「イートインにド底辺どもばかり居座って困る」
<コンビニ>
店長「お洒落な高校生や多忙なサラリーマンに休息の場を、と思って」
店長「ついにうちでもレジ横にイートインコーナーを導入したはいいものの……」
チンピラ「うひょ~! このグラビア女優、色っぺぇ~!」ペラ…
ホームレス「ワンカップ酒、最高だねぇ……」グビグビ
店長「……こんなド底辺どもばっか居座りやがる」
店長「困っちゃうよねえ?」
バイト女「そんなことより時給上げて下さい」
店長「…………」
引用元: http://viper.2ch.sc/test/read.cgi/news4vip/1494419712/
5: 以下、ニュー速クオリティでお送りします 2017/05/10(水) 21:38:37.821 ID:ID:CYM/7U8t0.net
チンピラ「なぁ~にが、底辺だよ!」
店長「む」
チンピラ「底辺ってのはこのコンビニのことをいうんだぜ!」
チンピラ「ホットスナックはどれもまずいし……このチキン、ほとんど骨じゃねえか!」ガリッ
チンピラ「アメリカンドッグもほとんど衣だしよ!」モグモグ…
店長「うるせーな! 文句あるなら食うな!」
チンピラ「しかも、なんで漫画雑誌、ゴラクとチャンピオンしかねーんだよ!」
店長「うるせーな! 俺の趣味だ!」
チンピラ「ヤンジャン置いてくれよ! キングダムとか読みてーんだよ!」
店長「歴史のれの字も知らない高卒がキングダム読むなんて100年早いんだよ!」
チンピラ「バカヤロウ! オレは中卒だ!」
ホームレス「ほっほ」
店長「ったくぅ~、ろくな客がいない……」
バイト女「店長」
店長「なんだい?」
バイト女「もう帰っていいですか?」
店長「えええ!? さっき来たばかりなのに!?」
店長(ろくなバイトもいない……)
ウイーン…
店長「っしゃせー!」
バイト女「いらっしゃいませ」
受験娘「…………」オドオド…
受験娘(えーっと、お菓子とコーヒーと……)
受験娘「これ、お願いします」
店長「ありがとうございます!」
受験娘「あと……あちらのイートインで少し勉強してもいいですか?」
店長「!」ピクッ
店長「どうぞどうぞどうぞ! 少しどころかいくらでもどうぞ!」
店長「あのスペースはあなたのような未来ある人のためのスペースですから!」
チンピラ「そりゃどういう意味だよ」
店長「うるせ!」
店長「これだよ……俺はこういうのを求めてたんだよ!」
店長「なんなら座布団を用意しましょうか? あとお茶と和菓子も……」
受験娘「いえいえいえ! そこまでしてもらわなくていいです!」
チンピラ「勉強ねえ……高校生っぽいから、大学受験か?」ジロッ
受験娘「!」ビクッ
受験娘「は、はははは、はい!」
チンピラ「おお、すまねえ。邪魔するつもりはねえよ」
受験娘「い、いえ……」
チンピラ「ま、頑張りなよ」
受験娘「はい!」
受験娘(怖そうな人だけど……案外いい人なのかも……)
シーン……
受験娘「…………」カリカリ
チンピラ「…………」
ホームレス「…………」
店長「ギャハハハッ! おいチンピラ! スマホいじってたら、面白いニュースが――」
チンピラ「シーッ!」
チンピラ「この子が勉強してんだろうが!」
店長「ご、ごめん」
ホームレス「仕事中にスマホいじりもいただけないねぇ」
店長「め、面目ない」
バイト女「空気の読めない人ですね」
店長「す、すみません」
受験娘「あ、あの、雑談してくれて結構ですから!」
受験娘「スペースを使わせていただいて、ありがとうございました!」
店長「また来てね~!」
チンピラ「んじゃ、俺も帰るとすっか」
ホームレス「私もダンボールハウスへ戻ろう」
店長「二度と来なくていいぞ」
店長「じゃあ、君もあがって――」
バイト女「お先に失礼します」
店長「もう着替えたの!?」
……
<コンビニ>
受験娘「…………」カリカリ
店長「毎日、頑張ってるね~」
受験娘「す、すみません、いつも遅くまで」
店長「いやいや、いいんだよ」ニコニコ…
店長「ちゃんといつも何かを買ってくれてるしね。どこかの二人と違って」
チンピラ「ファミマでスパイシーチキン買ってきたぜ」ガサガサ…
ホームレス「私はローソンで焼き鳥を買ってきたぞ」ゴソゴソ…
店長「ってお前ら、堂々と他のコンビニの商品持ち込んでんじゃねーよ!」
チンピラ「だってここのメシまずいんだもん」
店長「だもん、じゃねーよ!」
ホームレス「君もファミチキ食べる?」
店長「……食べる」
受験娘「ふう……疲れた」トントン
チンピラ「よく集中力続くな。オレは勉強なんかしても五分ももたねーぜ」
受験娘「私もそこまで集中力はよくないですよ。時々勉強が嫌になりますし」
チンピラ「そういう時はオレを見てみな」
受験娘「へ?」
チンピラ「こういう奴にならないように、ってみるみるやる気が沸いてくるぞ」
店長「ハハハ、そりゃいいや! 悪い大人の見本だもんな!」
ホームレス「ほっほ」
受験娘「そんな……」
受験娘「私、チンピラさんはとても優しい人だと思います。ホームレスさんも……」
チンピラ「オレが優しい? おいおい、目が曇ってるどころじゃねえぞ」
チンピラ「そんなんじゃ、大学入れても、変な男に騙されちまうよ」
店長「そうだよ! 騙されちゃいけないよ!」
店長「君はここにいるド底辺どもなんかとは違うんだから! 住む世界が違うんだよ!」
バイト女「店長」
店長「お、君からもいってやってよ!」
バイト女「時給上げて下さい」
店長「…………」
……
<コンビニ>
受験娘「う~ん……」
店長「どうしたの?」
受験娘「あ、いえ、この問題が難しくて……解答見てもイマイチよく分からないんですよね」
店長「へえ~、どれどれ……」
店長「分からん」
店長「チンピラ、お前はどうだ?」
チンピラ「オレが分かると思う?」
ホームレス「ほっほ、どれどれ……」
店長「おいおいおっちゃん、俺に分からない問題があんたに分かるわけが――」
ホームレス「これは……こうだねぇ」
ホームレス「式を書いてみると、こう……」カリカリ…
受験娘「あっ、すごい! 分かりやすいです!」
チンピラ「へえ、ホームレスのおっさんって頭いいんだ!」
チンピラ「もう底辺なんてバカにできねえなぁ~」チラッ
店長「ぐぬぬ……」
バイト女「店長」
店長「なに? また時給?」
バイト女「負け犬」
店長「くううぅ~~~~~~~~~!!!」
……
<コンビニ>
チンピラ「へえ~、家計が苦しくて塾とか通えないのか」
受験娘「はい……」
受験娘「だから、店長さんの御好意には本当に感謝しています」
店長「いやぁ~、なんのなんの」
チンピラ「どうせこの店、オレら以外ほとんど客いねえしな」
店長「うるせえよ!」
バイト女「潰れる時は前もって教えて下さい。退職金たっぷり要求しますから」
店長「怖っ!」
チンピラ「ま、貧乏っつったらオレだって金があるとはいえねーけどな」
受験娘「チンピラさんってどういうお仕事をされてるんですか?」
チンピラ「え……」
店長(ぷっ……こんなワルにこういうことを堂々と聞ける純粋さって怖いねえ)
チンピラ「まあ、競馬とか……スロットとか……たまにダフ屋とか……」
店長「どうしようもないな」
チンピラ「あと……ダチから会社やるから手伝ってくれっていわれてるんだけど」
チンピラ「な~んかキナ臭い感じでな。絶対ヤバイ犯罪絡みなんだよな」
チンピラ「ま、オレみたいな奴がまともな職につくなんて無理だろうし」
チンピラ「いっそとことん犯罪者になってみるのもいいかもな~」
受験娘「ダメですよ、絶対!」
チンピラ「え……」
受験娘「私、チンピラさんなら絶対まともな仕事できると思います!」
チンピラ「いやぁ~……どうだろ……無理だと思うけど……」
受験娘「できますよ! 諦めちゃいけません! お願いします!」
チンピラ(うぐ……どうもオレはこの娘に弱いなぁ……)プイッ
店長「おいおいチンピラ、目を逸らしてんじゃねーよ」
チンピラ「うるせーな!」
ホームレス「ほっほ、たしかにチンピラ君は根はいい人間だと思うよ」
店長「へ? どうして?」
ホームレス「昔、私がホームレス狩りと称する連中に絡まれてた時……」
ホームレス「チンピラ君がそいつらをあっさり叩きのめして、助けてくれたことがあったんだよ」
店長「え、そんなことあったの?」
受験娘「すごい……チンピラさん、正義のヒーローじゃないですか!」
チンピラ「おいおっさん、内緒にしといてくれっていったろ~!」
ホームレス「ほっほ」
受験娘「自分のしたことを自慢しない……素晴らしい心がけですね!」
チンピラ「……くだらね」
店長「まあ、しょせんは不良がたまにいいことすると褒められる現象、みたいなもんだし……」
バイト女「店長」
店長「なに?」
バイト女「全然いいとこないですね」
店長「もうほっといて!」
そんなある日――
<コンビニ>
ホームレス「この問題はこう解けば――」
受験娘「…………」クラッ
チンピラ「おい、大丈夫か?」
受験娘「す、すみません。ちょっと……だるくて……」
チンピラ「もしかして熱あんじゃねーか?」
ホームレス「体温を測った方がいいかもしれんね」
店長「しかし、うちは体温計なんて置いてないし……」
バイト女「体温計どうぞ」サッ
店長「なんで持ってるの!?」
バイト女「いつでも仮病で帰れるようにするためです」
店長「なるほどー!」
受験娘「う……」ピピピッ
チンピラ「かなり熱あるな……下手すりゃインフルかもしれねえぞ」
ホームレス「今日はもう帰った方がよいね。こじらせたら大変だ」
受験娘「すみません、もしうつしてしまったら……」
チンピラ「んなことはいいけどよ、こっから家はどのぐらいだ?」
受験娘「自転車で20分ぐらいです」フラッ…
チンピラ「そんなフラフラで家までチャリこげるか? どれ、車で送ってってやるよ」
店長「お前……まさかこの子を拉致しようってんじゃ」
チンピラ「んなことするか!」
店長「心配だから俺もついていくぜ」
ホームレス「私も」
チンピラ「へいへい、好きにしな」
受験娘「皆さん、すみません……」
店長「じゃ、バイトちゃん、店番頼んだよ!」
バイト女「店の商品食べてもいいですか?」
店長「もう好きにしてぇ!」
ブロロロロ……
店長「しっかし、ボロイ車だな。爆発しねーだろうな」
チンピラ「するかバカ!」
受験娘「あそこです」
チンピラ「じゃ、ここらで止めるぜ」キキッ
受験娘「皆さん、本当にありがとうございました」コホンコホン
店長「いやいや、風邪治ったらまた来てくれよ」
受験娘「はい……失礼します」
チンピラ「じゃ、コンビニに戻るか」
ホームレス「もう一杯飲んだら今夜はダンボールハウスに帰ろうかねぇ」
店長「酒ならちゃんとうちのを買ってくれよな」
「てめえ、こんな時間までなにやってやがった!」
「受験勉強を……」
「受験だぁ? ふざけんな! んな金あるか!」
「だからお父さんには頼らないって……国公立目指して……奨学金で……」
「生意気なクチ聞くんじゃねえ!」
「やめて、あなた!」
バリィンッ! ガシャーンッ! バシッ!
店長「え……!?」
チンピラ「あの娘の家からだ」
ホームレス「物騒な声がしとるねえ……」
「大学なんて行ったって意味ねえんだよ! このバカタレが!」
「痛い! やめてっ!」
バシッ!
店長「なるほどな……」
店長「いつもイートインに来る理由が分かったぜ……。これじゃ家で勉強なんてできるわけないもんな」
チンピラ「……どうするよ?」
店長「どうするって、決まってんだろ?」
店長「お客様の悩みを解決するのは、コンビニ店長の義務だ」
チンピラ「へへっ、そうこなくちゃな!」
ホームレス「さいわい、カギは閉まってないようだしねぇ」
店長「突入!!!」
<受験娘の家>
バァンッ!
店長「おい、うちのお客様になにやってんだ!」
チンピラ「おうおう、いいおっさんが真面目な我が子にDVかよ」
ホームレス「ほっほ」
父「な、なんだお前ら!?」
受験娘「皆さん……!」
父「お前、こんな連中と付き合ってたのか!? なにが受験勉強だ!」グイッ
受験娘「あうっ!」
母「あなた!」
チンピラ「おい、やめろ!」
父「な、なんだ! やる気か!? いいぞ、相手になってやる!」ウイー…
父「このっ!」ブンッ
ガッ!
チンピラ「なんだこれ? まともにケンカしたことなんざねーってパンチだな」
チンピラ「オラァッ!」ブオンッ
父「わわっ!」
――ピタッ!
父「あ……あああ……」ヘナヘナ…
チンピラ「ふん……殴る価値もねえや」
店長「さっすが高卒チンピラ、こういう荒事には慣れっこだな」
チンピラ「だから中卒だっつの」
ホームレス「あんたの雰囲気からして、元から飲んだくれだったってわけでもなかろう」
ホームレス「事情を話してみなさい」
父「うう……」
受験娘「お父さん……!」
母「あなた、話してみた方がスッキリすると思うわ」
父「くううぅぅぅ……」
父「私は半年前、落ち度もないのに会社をリストラされてしまい……」
父「再就職もうまくいかず……そのうち下戸だったのに酒を飲むようになってしまって……」
店長「それでみるみる荒れてしまったと」
チンピラ「だからって娘にあたるのはよくねえな! 娘は娘で頑張ってんだからよ!」
父「は、はい……」
店長「しかし、どうするか……うちで雇ってもいいけど……」
チンピラ「それなら無職のがマシだな」
店長「どういう意味だ!?」
ホームレス「あの……あなたの前職は?」
父「経理を……」
ホームレス「ふむふむ……経理か……」
ホームレス「ならばこの会社へ連絡してみて下さい」サラサラ
父「ここは……?」
ホームレス「私の知り合いがやっとる会社です。まだ私の名前がきくかもしれません」
父「は、はい……す、すみません……」
受験娘「お父さん……」
母「あなた……」
店長「じゃ、俺たちは戻るか」
チンピラ「ああ、あとは家族の問題だな」
ホームレス「ほっほ」
二週間後――
<コンビニ>
店長「おお、お久しぶり! 待ちわびてたよ!」
受験娘「こんにちは!」
受験娘「皆さん、その節は本当にありがとうございました!」
受験娘「風邪もよくなりましたし、お父さんも再就職先が決まったようで……」
チンピラ「へっ、よかったな」
ホームレス「ほっほ」
チンピラ「しっかし、ホームレスのおっさんにあんなコネがあったなんてな」
チンピラ「おっさん、あんた何者なんだ? そろそろ教えてくれてもいいんじゃねえか?」
ホームレス「ほっほ……ま、いいだろう」
店長(お? 雰囲気が変わった……)
ホームレス「私は……かつてある大学の教授だったんだよ」
店長「大学教授!?」
チンピラ「マジかよ!」
受験娘(どうりで頭がいいと思ったわ……)
店長「だけどどうして、ホームレスなんかになっちゃったんだ?」
ホームレス「同じ大学の教授に、不正入学を斡旋していた者がいたんだよ」
ホームレス「大金を受け取り、その見返りとして不正に入学させる」
ホームレス「彼女のように真面目に勉強してる人間からしたら、これほどバカらしいこともない」
店長「……! いわゆる裏口入学ってやつか」
ホームレス「私は彼を糾弾しようと決めた」
ホームレス「ところが――」
ホームレス「私の動きを察知した彼に、先手を打たれてしまった」
ホームレス「私はまんまと罪を着せられ、裏口入学を斡旋する教授として、大学を追い出され」
ホームレス「地位も金も家族もなにもかもを失い、ホームレスになった……というわけさ」
ホームレス「一応、こんな私でも、慕ってくれてる人はまだいるがね……」
店長「そういや一時期ニュースで騒がれてたっけな。あれがおっちゃんだったのか」
チンピラ「ケッ、どこにでもクズってのはいるもんだな」
受験娘「なんてひどい……」
店長「…………」
店長「おい、おっちゃん」
ホームレス「?」
店長「やられっ放しで悔しくないのか?」
ホームレス「え……」
店長「そのイカサマ教授をギャフンと言わせたいとは思わないのか?」
ホームレス「そりゃもちろん、思うといえば思うが……」
店長「古来よりコンビニ業界には、こういう言葉がある」
店長「ファミチキにはLチキを……ってな」
受験娘「?」
チンピラ「は?」
バイト女「意味が分かりません」
ホームレス「どういうことだね?」
店長「つまりある商品に対抗するには、似たような商品で対抗しろってことだ」
受験娘「目には目を、歯には歯を、みたいなことですね! ハンムラビ法典!」
チンピラ「ハム?」
店長「そういうことだ」
店長「ハメられたなら、ハメ返す! 10倍返しだ!」
ホームレス「しかし、ハメるといってもどうやって……」
店長「簡単だよ。裏口入学したいですって近づいて、決定的瞬間を押さえればいい」
チンピラ「そりゃいいけどよ、誰が裏口入学したい役をするんだよ?」
店長「そこはお前が……」
チンピラ「オレが!? 高校生!? 無理あんだろ!」
店長「留年しまくってたことにすれば……」
チンピラ「無理ありすぎだろ!」
受験娘「だ、だったら……私、やります!」
店長「え!?」
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店長「だけど……勉強は?」
受験娘「一日ぐらい休んでも平気です!」
ホームレス「しかしなぁ……君をこんなことに巻き込みたくは……」
受験娘「それに……勉強を教えて下さったホームレスさんに恩を返したいんです!」
店長「……分かったよ」
店長「よし、ホームレスのおっちゃんをはめた教授をブッ潰すぞ!」
オーッ!!!
<大学>
店長「じゃあ、俺は裏口入学を依頼にきた父親役をやるから」
店長「娘役、しっかり頼んだよ」
受験娘「はいっ!」
チンピラ「後からやってきて、脅す役は任せとけ!」
店長「なにしろ本業だからな」
チンピラ「んなことねえから!」
ホームレス「みんな……どうか無理はしないでくれ」
教授「ほう……娘を裏口入学させたいと」
店長「はい、私、自分の店を持っておりまして、金に糸目はつけません」
店長「この可愛い娘を、なんとしてもこちらの大学に入れてあげたいのですよ」モミモミ
店長「ほら、お前も頼め!」
受験娘「お願いしまぁ~す! 受験勉強なんてかったるくてやってらんないんでぇ~!」ファサ…
教授「ふむ……」
教授(典型的な金持ちのバカ親とバカ娘だな……クックック、こりゃあいい)
教授「よろしい」ニィィ…
教授「君を入学させてあげよう。ただし金額は弾んでもらうがね」
店長「あ……ありがとうございます!」
受験娘「マジ? チョー嬉しい~! 大学でオトコ作りまくるぅ~!」
店長「しかし、本当に大丈夫なんでしょうね? お金だけ持ち逃げされたらたまりませんよ」
教授「心配いらない。私はこれまでに何十人も裏口入学させてるからね」
店長「秘密が漏れる心配は?」
教授「それも心配無用だよ」
教授「前にも秘密を嗅ぎつけた者がいたが、ちゃんと“処分”してやったからね」
「おっと聞いちまったぜ~!」
チンピラ「おうおうおう、裏口入学だぁ!? い~けないんだ、いけないんだ」
教授「なんだお前は!?」
チンピラ「正義と平和と、公正な受験を愛する者でぇ~っす」
チンピラ「今の会話……バッチリ録音させてもらったぜ」
チンピラ「これバラされたら……あんた、かなりヤバイんじゃね?」
教授「な、な、な……!」
教授「まさかお前たちは――」ギロッ
店長「ハハハ、なんのことやら。なぁ、娘よ?」
受験娘「うん、パパ! なんのことか分かんなぁ~い」
チンピラ「この二人はどうでもいんだよ! オレの話だけ聞け!」ギロッ
教授「ひっ!」
チンピラ「いいか……バラされたくなきゃ、金をよこすか……あるいは……」
チンピラ「あのおっさんを復職させろ!」
教授「おっさん……?」
ホームレス「……久しぶりだな」
教授「き、貴様はッ! 貴様がこんな連中を引き込んだのか! この卑怯者!」
ホームレス「……卑怯はお互い様だろう」
チンピラ「詳しい打ち合わせについては、この紙に書いといたコンビニでやろうや」
チンピラ「おまわりさんに泣きつきたいとこだろうが、そういうわけにもいかねえだろ」
チンピラ「ま、お互い損のない取引にしましょうや。ヒャハハハッ!」
教授「ぐ、ぐぐぐ……っ!」ガクッ
店長「じゃ、凱旋するぞ、イートインの愉快なド底辺たちよ」
チンピラ「へーい、底辺店長」
ホームレス「ほっほ」
受験娘「は~い」
バタン…
教授「くそっ!!!」ガンッ
教授「おのれぇ~……まさかこんな手に引っかかるとは! 油断したわ……!」
教授「こうなれば……」ピッピッピッ
教授「おい……頼みがある」
教授「うむ……こういう時のために契約してるのだ。いつものように、しっかり頼むぞ……!」
<コンビニ>
アッハッハッハッハ……!
店長「うまくいったな! いやぁ~、いい演技だったよ!」
受験娘「楽しかったです!」
店長「受験やめて、女優目指すってのもありじゃない?」
受験娘「そ、そんな……」
店長「ちなみにお前は演技に見えなかったよ。あれ、素だろ?」
チンピラ「うるせえよ」
チンピラ「しっかしあの野郎、どうするかな?」
店長「復職はさすがにキツイだろうから、金払う方を選ぶだろうさ」
店長「そしたら、ホームレスのおっちゃんの暮らしもだいぶ楽になるだろ」
ホームレス「みんな……ありがとう」
ホームレス「うろたえる奴の顔を見ただけで、だいぶスッキリしたよ」
店長「みんなでホットスナック食いながら、あの教授が来るのを待つとしますか」
バイト女「店長は仕事して下さい」
店長「……はい」
……
ところが――
受験娘「――――!」
受験娘「あ、あの……」
店長「ん?」
チンピラ「どした?」
受験娘「窓の外……。このコンビニに……大勢の怖そうな人がやってきてます!」
店長「ええええええええええ!?」
バイト女「店長、私早退します」スタスタ バタン
店長「ええええええええええええええええ!!?」
手下A「コンビニは囲み終わりました」
グラサン「よぉ~し、あのコンビニにいる連中、二度と歯向かえないように徹底的にボコれ」
グラサン「んで、持ってる証拠を全部取り戻せ」
グラサン「あの雇い主は金払いがいいからな……完璧に仕事こなせよ」
手下A「分かってますって!」
手下B「任せといて下さい!」
~
チンピラ「あ、あいつは……!」
店長「くそっ、あの教授、あんなゴロツキどもを飼ってやがったとは……!」
受験娘「ど、どうしましょう……?」
チンピラ「……三人とも」
店長「なんだよ? まさかお前も逃げるってか?」
チンピラ「そうじゃねえ……ここはオレ一人でやらせてくれ」
店長「ハァ!?」
ホームレス「なにをいってるんだね!」
受験娘「相手はあんな大勢ですよ! 無茶です!」
チンピラ「いや……ヤツとはオレが決着つけなきゃならねえんだ!」ダダダッ
受験娘「チンピラさんっ!」
チンピラ「よう」ザッ…
グラサン「テメェは……!」
チンピラ「なるほど……お前の会社ってのは、あの教授みたいな奴の依頼に応じて」
チンピラ「こういう仕事をこなす会社ってわけか」
グラサン「ヒヒヒ、その通りよ」
グラサン「テメェがいんならハナシははええ。手ェ組もうぜ」
グラサン「今、お偉いさんどもはオレらみてーなフリーな暴力要員を欲しがってるからな」
グラサン「テメェが加わってくれりゃ、百人力よ」
チンピラ「どうやら、とことん腐っちまったようだなぁ……親友」
チンピラ「お前のクソみてえな仕事に、誰が手なんか貸すか!」
グラサン「やっぱりな……そういうと思ってたぜ」
グラサン「だったらコンビニの中にいる連中もろともブッ殺してやるよ!」
グラサン「やっちまえっ!!!」
チンピラ「ふん、一人たりとも中に入れるかよ!」
ウオオオオッ!!!
手下A「ダラァッ!」
チンピラ「オラァッ!」
ボゴォッ!
手下A「ぐぴゃっ!」
チンピラ「であっ!」
バキィッ!
手下B「ぐぼっ……!」
~
受験娘「すごい! あの数相手に……!」
ホームレス「しかし、相手は50人はいるぞ……無謀すぎる!」
店長「…………」タタタッ
受験娘「店長さん!?」
ガッ! ――バキッ!
チンピラ「……ぐっ!」ヨロッ…
店長「チンピラ、俺も加勢するぜ!」
チンピラ「バカ! こいつら全員、ケンカ慣れしてやがる! 来るな!」
店長「ふん……客がボコられてるのに、助けに入らないコンビニ店長がいるかよ」
手下C「喰らえ!」ブオッ
チンピラ「店長、後ろ!」
バシィッ!
店長「おっとォ……お箸はお付けいたしますか?」
手下C「な!?(箸で受け止めやがった!)」グググ…
店長「今ならホットドッグができたてですっ!」シュッ
ドスッ!
手下C「ぐはっ……!」ドサッ
チンピラ(すげえ、ホットドッグの串を正確に急所に……!)
店長「ゴミ袋クラッシュ!」ドゴッ
店長「商品陳列拳!」シュバババババッ
店長「レシート紙吹雪!」バササササッ
店長「熱々のコーヒーだ!」バシャッ
「ぐはっ!」 「うがががっ!」 「わぶっ!?」 「あっちぃぃぃ!」
グラサン「なんだあいつは……! メチャクチャ強えじゃねえか!」
チンピラ「やるじゃねーかよ、店長!」
チンピラ「だが、コンビニやってるだけで身に付けられる動きじゃねえ……あんた何者だ?」
店長「……コンビニ店長だよ」ニヤッ
チンピラ「そういうことにしといてやるか!」
バキッ! ドカッ! ドゴッ! ガッ! ボカッ!
グラサン「ちっ、こっちはあと40人はいるんだ! 一気にかかれえっ!」
チンピラ「ぐっ……!」
店長(この人数は……さすがにキツイな!)
~
受験娘「私も……!」ガタッ
ホームレス「ダメだ! 君と私ではあの連中のうち一人も倒すことはできん!」ガシッ
ホームレス「足手まといになって、彼らの負担を増やすだけだ!」
受験娘「うぐ……」
ガッ! バキッ! ゴッ!
コンビニ店長「くそっ……」
チンピラ「ちっ……! いいのもらっちまった……!」ペッ
グラサン「ヒヒヒ、チンピラ……所詮テメェはオレと同類……ド底辺に生きる人間だ」
グラサン「オレたちみてえのは、つるんで悪さして、初めてまともに生きてけるのさ」
グラサン「オレと手を切った時点で、テメェはもう終わってンだよ!」
チンピラ「…………!」
店長「――んなことねえよ」
店長「たしかにこいつはバカだし、底辺だし、高卒だが――」
チンピラ「中卒」
店長「イートインで勉強してる女の子がいたら静かにできる奴だし」
店長「ホームレスのおっちゃんのピンチを救うことだってできる奴だ」
店長「お前みたいなクズ野郎とつるんでいいような奴じゃねえんだよ!!!」
チンピラ「店長……」
グラサン「ぐ……! このっ……! たかがコンビニ店長の分際で……!」
グラサン「おいテメェら! もうかまうこたぁねぇ! こいつらブッ殺しちまえ!!!」
ウオオォォォォォ……!
ゴゴゴゴゴ……!
ブルドーザー「…………」ゴゴゴゴゴ…
「なんだ?」 「ブルドーザーだ!」 「なんでこんなとこに!?」
ブルドーザー「…………」グオオオオオオッ
「うわっ、なんだ!?」 「突っ込んできた!」 「全然スピード落とさねえぞ!」
チンピラ「なんだあれ!?」
店長「俺が知るかよ!」
ブルドーザー「…………」グオオオオオオオオッ
「潰されちまうぅっ!」 「逃げろぉっ!」 「うわわわぁぁぁっ!」
グラサン「おいっ! 待て! 逃げんなッ!」
チンピラ「おめえの相手は俺だぜ」ヨロッ…
グラサン「ぐっ!?」
グラサン「んなボロボロで、オレに勝てるつもりかァ!」ブオンッ
バキッ!
チンピラ「ぐっ……へっ、痛くねえ……!」
チンピラ「手下に頼るようになって、ケンカも弱くなっちまったみてえだな!」ブオッ
ドゴォッ!!!
グラサン「ごぶぁぁっ!」ドザァッ…
チンピラ「ふぅ~……残る手下はみんな逃げたみてえだな」
店長「いいパンチだったぜ」
チンピラ「ところで、あのブルドーザーは? 一体誰が……?」
バイト女「私です」スタッ
店長&チンピラ「えええええええええええ!!?」
バイト女「最初は警察呼ぼうと思ったんですが、警察ぐらいじゃ怯みそうもない相手だったんで」
バイト女「ならブルドーザーの方が手っ取り早いかな、と」
バイト女「あっちにある工事現場の監督さんに頼んで、拝借してきちゃいました」
店長「拝借て……よくもまあ涼しい顔で……」
チンピラ(この子、オレなんかより遥かにぶっ飛んでるのかも……)
バイト女「それより、あちらの方が目を覚ましたようですよ」
グラサン「ぐ……」ヨロッ…
店長「おい、一応聞いておく。誰に雇われた?」
グラサン「い、いうわけねえだろ……」
店長「ですよねー」
店長「ってわけでバイトちゃん、≪コンビニ式拷問≫の用意を」
バイト女「分かりました」
店長「まず、チンピラにやられた傷にアメリカンドッグのカラシ塗りつけて……」ヌリヌリ…
グラサン「痛い痛い痛い! や、やめやがれぇ!」
店長「バイトちゃん、塗ったとこにお湯かけたげて」
バイト女「熱々です」ジョボボボボ…
グラサン「バカ! やっ、やめっ――ああああああああああああああああっ!!!」
店長「誰に雇われた?」
グラサン「きょ、教授っ! 裏口入学させまくってる、悪徳教授だぁぁぁっ!」
チンピラ「うへぇ~……恐ろしい拷問だぜ」
受験娘「やっぱりあの二人は息ピッタリなんですね!」
ホームレス「これでやっとあいつにも天罰が下せるねぇ……」
…………
……
<コンビニ>
≪大学教授、不正入学斡旋発覚! 濡れ衣も着せていた模様!≫
店長「クックックックック……」バサッ
店長「ざまあ!」
店長「こんな奴はこうなって当然なんだ! このっ! このっ!」ビリビリッ
バイト女「店長、それ売り物ですよ」
店長「あーっ!!!」
バイト女「でも……みんな来なくなっちゃいましたね」
店長「……仕方ないさ」
店長「あれからチンピラはまともな職につけるよう頑張り出したし」
店長「受験娘ちゃんは家族と仲良くなり、おっちゃんも濡れ衣が晴れて特別に復職話が来たらしい」
店長「もうイートインに入り浸る理由なんかないからな」
バイト女「寂しいんですか?」
店長「アホかっ! 寂しくなんかないやい!」ウルッ…
バイト女「寂しいんですね」
ウイーン…
女子大生「お久しぶりです!」
会社員「ちわーっす!」
大学教授「ほっほ」
店長「うわっ! 受験娘ちゃん、チンピラ、おっちゃん!」
バイト女「いらっしゃいませ」
店長(みんな……)ウルッ…
女子大生「やっぱり、ここは落ち着きますね~。またちょくちょく通わせてもらいますね!」
会社員「なんつーか実家みたいな安心感だもんな! 相変わらずメシはマズイけど!」
大学教授「我々の秘密基地というか、第二の故郷みたいなものだしねぇ」
店長「ったく……やっと静かになったと思ったのに」
バイト女「顔が笑ってますよ、店長」
店長「分かる? これも一種の親心なのかな、なんて思ったりして――」
バイト女「嬉しいついでに時給上げて下さい」
店長「…………」
おわり
面白かった
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