悟空「おいベジータぁ。おめぇ、目が真っ赤だぞ」ベジータ「なっ……!」
ベジータ「ゴーグルをつけずにプールで遊んだせいか……!」
悟空「ほれ、ロートこどもソフト。使うだろ?」
ベジータ「あ、ああ……」
悟空「……」
ベジータ「……」
悟空「どうしたんだよ。目薬、点さねぇんか? 点さねぇんなら、返してくれ」
ベジータ「いや、使う……。目が真っ赤なのに放置したら、眼病になるからな」
悟空「だったらはやくしろって」
ベジータ「わ、わかっている! チッ、せかしやがって……! ……ふぅ」
悟空「……」
ベジータ「……ハァッ……ハァ、ハァ……! ぐぅ……!」ガクガク
ギュゥゥゥゥゥゥ
悟空「なあ、手が震えてねぇか? そんなに力いれてっと容器が――」
ベジータ「くそったれぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
ベキャッ ビチャァ
悟空「いぃ!? な、なんてことすんだよ! オラのこどもソフトが! あ~あ、潰れちまった……!」
ベジータ「だ、ダメだ……! オ、オレは目薬を点すのが大の苦手なんだ……! な、情けないぜ……!」
悟空「ベジータおめえ……その歳で目薬がこえぇんか?」
引用元: ・悟空「おいベジータぁ。おめぇ、目が真っ赤だぞ」ベジータ「なっ……!」
ベジータ「ああそうだ! 笑いたければ笑えばいいだろう……!」
悟空「べつに笑わねぇけどよぉ。どうすんだ? 目が真っ赤なのにほったらかしてっと、眼病になっちまうぞ?」
ベジータ「わかっている……! おいカカロット! 新しい目薬はないのか!?」
悟空「あるけどよ……また潰しちまわねぇでくれよ?」
ベジータ「ハァっ……ハァッ……! く、くそっ……! て、手が震えやがる……!」プルプル
悟空「そんなに目を細めてちゃ、目薬がうまく入んねえだろ。もっとこう、大きく目を開けろって」
ベジータ「わかっている! ゴチャゴチャ言うな!!!」
ベジータ「……い、いくぞ……! か、覚悟はできた……! 一発だ、一発で終わらせてやる……!」
キュゥゥゥゥ ピチョン
ベジータ「……っ!」
悟空「おっ。ハッハー! うまく点せたなぁ!」
ベジータ「くくく……はーっはっはっは! 見たか、カカロット! 目薬の野郎、馬鹿正直にオレの目へ落ちていきやがった……!」
ベジータ「いい気味だぜ……。せいぜい、オレの目を労わってもらう……!」
悟空「そんじゃ、もう2滴だな」
ベジータ「ナニィ!? も、もう2滴だと……!?」
悟空「ああ。1回3滴が適量って書いてあんだろ?」
ベジータ「あ、ああ、あ、あ……な、なんてこった……! あと2滴も目薬を点すのか……!?」
悟空「そんだけじゃねえぞ。3滴を1日に5回が目安だかんな」
ベジータ「い、1日に5回……! 合わせて……じ、15滴か……!? 狂ってやがる……!」
悟空「それに、おめえまだ片目にしか点せてねえよな? 目薬は両目に点さねえと意味ねぇぞ」
ベジータ「ナニィ!? カカロット……貴様ぁ!!! オ、オレに30滴も目薬を点せと言うのか!?」
ベジータ「ふざけるな!!! さ、30滴など……想像しただけで涙が出てきやがる……!」
悟空「んなこと言ったってよぉ……そうしなきゃ効果がねえんだ。しょうがねえじゃねぇか」
悟空「さっきもできたんだし、簡単だろ? もういっぺんやってみろって」
ベジータ「くそったれぇ……! ロートめ……お、覚えてやがれ……!」
ベジータ「はぁっ……はぁっ……ぜぇ、ぜぇ……! うぐ、っぐぐぅ……」ガクガクガクガク
悟空「もっと肩の力抜けって」
ベジータ「………はぁ……あ、ああぁ……! ああっ! はぁ!!! ああああああっ!!!!」ガクガクガクガクガク
ベジータ「アアァッ!!!」ガクンッ
ドサッ
ベジータ「」
悟空「いぃ!? き、気絶しちまった……!」
~神殿~
ベジータ「ぬおぁっ!!!」
ガバッ
デンデ「あっ、目を覚ましましたよ」
ピッコロ「ずいぶんと魘されていたな。悪夢でも見たか」
ベジータ「オ、オレはいったい……」
悟空「おめえ、急に倒れちまったんだぞ?」
ピッコロ「目薬を点そうとしたが、恐怖のあまり失神したらしい」
ベジータ「チッ……! 結局、目薬は1滴しか点せなかったのか……!」
クリリン「しかし意外だよな。まさかベジータが目薬をうまく点せないなんて。ハハ……」
ベジータ「貴様……わ、笑いやがったのか……!?」
クリリン「だってそうだろ? 散々、誇り高きサイヤ人の王子って言ってたのに……目薬が怖いなんて思わないからさ」
ベジータ「怖くなどない! ただ、目薬が目に落ちる事態に、気持ちが追いつかないだけだ……!」
ベジータ「……だいたい、何故貴様らが揃っている! オレを笑いにきやがったのか!?」
悟空「そうじゃねえよ、オラが呼んだんだ。ベジータの目薬嫌いをみんなで治してやろうと思ってな」
悟空「このままおめえが目薬を点せないままだと、大変だろ? 目が見えなくなっちまったら面倒だしよ」
ピッコロ「いくら気で相手の動きを察知できると言っても、限度がある。武道家として失明はなんとしても避けたいだろう」
ベジータ「チッ……余計な気をまわしやがる……」
悟空「おしっ、いっちょ手本を見せてやっかぁ!」
クリリン「手本?」
悟空「どんなことでも、達人の真似をすりゃうまくいくもんさ。オラだって、じっちゃんのかめはめ波を真似して撃てるようになったんだし」
ピッコロ「て、手本か……孫、お前がやって見せろ」
悟空「ああ、見てろよベジータ。まずは、こうして……目薬の口の部分を直接眼球に当てんだ」
ベジータ「!!!」
ピッコロ「!!!」
悟空「そんで、後は容器を軽く押してやりゃあ……なっ? 簡単だろ?」
デンデ「ご、悟空さんは容器を直接目に当てて点すんですか……?」
悟空「ああ」
クリリン「よ、よくそんなことできるな……。眼球が傷ついたりしないのか?」
悟空「オラの目はそんなヤワじゃねえ。ベジータだって同じはずだ。だろ?」
ベジータ「」
悟空「いぃ!? ま、またのびちまってる……」
クリリン「し、刺激が強すぎたんだ……!」
悟空「おい! 起きろって! ベジータぁ!」
赤みを消す奴って血管収縮剤ってのが入ってて、
そいつで赤みを消してるんだ
ダメージを受けた目を修復するために必要だから血流を増やしてんのに無理矢理血管を収縮させてるわけだな
懐かしすぎワロタ
ベジータ「な、なんてもの見せやがる……! これがトラウマにでもなったらどう責任をとるつもりだ!!!」
悟空「わ、わりかったって……なにもそんなにビビることねえだろぉ?」
クリリン「悟空、さすがに今のやり方はあんまりだ。ベジータには絶対無理だよ」
クリリン「そもそも、液体が怖いんだから……固体が触れるとなれば尚更だろ?」
悟空「ん~、そっかぁ……。そんじゃピッコロ、次はおめえが手本を見せてやれよ」
ピッコロ「」
悟空「いぃ!? ぴ、ピッコロも立ったまま気絶してっぞ!?」
クリリン「えっ!? な、なんでピッコロまで……?」
デンデ「じ、実は……ピッコロさんも、苦手なんです……その、目薬を点すのが」
クリリン「ピッコロも!?」
悟空「ひゃ~!」
ピッコロ「ハッ……! オレはいったい……! クソ……どうやら、意識を失っていたようだな……」
悟空「おいピッコロぉ。おめぇ、目薬点すんが苦手ってホントかよぉ」
ピッコロ「…………ああ。隠すつもりはなかった」
悟空「おっどれぇたぁ~」
ベジータ「フン……まさかピッコロまでこちら側とはな……」
クリリン「お、お前ら見かけによらなさすぎだろ……全然イメージ無いぞ」
ピッコロ「それはこちらの台詞だ。目に直接液体をかけるなど……貧弱な地球人とは思えん、野蛮で暴力的な発想だろう」
悟空「そっかぁ、ピッコロには無理かぁ。んじゃ、しょうがねぇな。手本はクリリンに――」
ピッコロ「待て。誰が『無理』と言った?」
悟空「いっ? だって、おめえも目薬点すんが苦手なんだろ?」
ピッコロ「苦手だが、できないとは言ってない」
ベジータ「ナニィ!? 貴様はこちら側のはずだろう!?」
ピッコロ「勝手に一緒にされては困るな。おいデンデ」
デンデ「は、はい。どうぞ、膝に」
ピッコロ「ああ」
ゴロン
悟空「お、おいピッコロ。おめえ、何してんだ?」
クリリン「デンデに膝枕なんてしてもらって……ま、まさか!」
ピッコロ「ひとりではできないことも、ふたりなら可能になる。これはそのいい手本だ」
デンデ「ピッコロさんが目薬を点す時は、毎回ボクがやってあげてるんです」
ベジータ「き、貴様ぁ……! 他人に点してもらうのは反則だろう! 恥ずかしくはないのか……!?」
ピッコロ「反則? 何を言っている。目薬に決まりごとなど無いはずだろう」
ピッコロ「くだらんプライドに縛られ赤い目を放置している貴様よりは、よほど建設的なやり方だと思うがな」
ベジータ「か、完全に正当化してやがる……! 聞いてあきれるぜ……!」
デンデ「ちょっと沁みますけど、我慢してくださいね」
ピッコロ「…………は、早くしてくれ」
デンデ「それじゃあ、いきますよ」
ピッコロ「あ、ああ……」ドキドキ
デンデ「……」
ピッコロ「まっ!」
デンデ「え?」
ピッコロ「び、秒読みをしてくれ……」
デンデ「あ、はい……それじゃあ、3から始めますけど」
ピッコロ「ああ……それでいい」
デンデ「3、2、いt」
ピッコロ「カァッ!!!!!!!!!!!」
ビッ ボンッ
デンデ「わっ!!! もう……ピッコロさん、怪光線で容器を破壊するのはやめてくださいと何度も……」
ピッコロ「す、すまん……つい、恐ろしさのあまり……防衛本能でな……」
クリリン「えっ……? ぴ、ピッコロ、お前……いつも目から光線出して目薬の容器を破壊してるのか?」
ピッコロ「ば、馬鹿を言うな! いつもではない……5回に3回程度だ」
悟空「ひゃ~! デンデぇ、おめえも大変だなぁ!」
デンデ「今度は我慢してくださいね。……3、2、1」
ピチョン
ピッコロ「のぉあ!!! ……っぁ! カァッ! はぁ……はぁ……!」ガクガク
悟空「お、おいピッコロ。おめえ汗だくだぞ、大丈夫か?」
ピッコロ「ああ、問題ない……体力を使いすぎただけだ……目はスッキリとしている」
クリリン「目には良くても身体には悪そうだな……」
ピッコロ「どうだベジータ」
ベジータ「どうだもクソもあるか……!」
ピッコロ「お前にはブルマというパートナーがいるだろう。頼めばいい」
ベジータ「貴様のようにか? フン、見るに耐えん無様さだったぞ……ブルマにあのような姿を見せるなど、あり得ん」
悟空「おめえも頑固なやつだなぁー。クリリン、今度はおめえが手本を見せてやってくれ」
クリリン「ああ。でも俺の目薬の点し方は普通だぞ? 参考になるかどうか……」
クリリン「……まず、顔を上に向けて……容器を目の位置に合わせて、点す」
ピチョン
クリリン「ほら、これだけだ。こんなの、披露してどうなるものでも――」
ピッコロ「な、なんてやつだ……! 驚くほど動きがスムーズだったぞ……! し、信じられん……!」
ベジータ「落ちてくる液体に対して少しの恐れも感じていなかった……クリリンのやつ、命は惜しくないのか……!?」
ベジータ「おいクリリン! 貴様ぁ……どうやって目薬の点し方を学んだ!」
クリリン「えっ?」
ピッコロ「よほどの修行を重ねない限り、こうも滞りなくいくとは思えん……師は誰だ? 武天老師に教わったのか?」
クリリン「教わるも何も……こんなの、最初からできるだろ。誰にでも」
ベジータ「ナニィ!? さ、最初からだと……!?」
ピッコロ「チッ……つまりは、才能ということだ。クリリンには目薬を点す才能があった。そしてその才能がオレたちには無い」
ピッコロ「これはどれほど足掻いても埋まるはずの無い絶対的な差だろう」
ベジータ「あ、ああ……!」
ガクッ
ベジータ「くそったれぇ……! れ、レベルが違いすぎる……! く、クリリンに敵わないとはな……!」
ベジータ「目薬に関してはとことん落ちこぼれのオレが……まともに目薬を点そうとしたのが間違いだった……!」
悟空「ベジータぁ、そう落ち込むなって」
ベジータ「こうなったらもう……し、死ぬしかない……!」
悟空「いぃ!?」
クリリン「お、おいベジータ! な、何を言い出すんだ!」
ピッコロ「気でも触れたか!?」
ベジータ「オレは至って冷静だ……要するに、オレが目薬への恐怖心を払拭できないのが問題だろう」
ベジータ「死体になれば、恐怖は感じない。感情が無くなるからな。おまけに、死ねば目を開いたままにできる」
ベジータ「一石二鳥だろう。死んだオレの目に目薬を点すのは簡単だ」
クリリン「そ、そんなアホみたいなこと、や、やめたほうがいい……! 死んじまえばそれで終わりなんだぞ!?」
ベジータ「ドラゴンボールがある! 目薬を点し終えた後で生き返ればそれで問題ないはずだ……!」
クリリン「お前はもうドラゴンボールで生き返ってるだろ!?」
ピッコロ「いや、地球の神龍は無理でも、ポルンガがある。問題はそこじゃない……」
ピッコロ「お前の死体に目薬を点す役は誰がやる? 他人に任せるのは主義に反するはずだろう?」
ベジータ「……超高度から目薬を落とし、その下へすばやく移動してから目薬の落ちるピンポイントで死ねば問題ないだろう」
悟空「なるほどな……へへ、考えたなぁベジータ」
クリリン「ご、悟空……!」
悟空「心配すんな。おめえの目に目薬が落ちたのを確認したら、すぐにドラゴンボールで生き返らせてやっからよ」
ベジータ「フン……」
クリリン「ほ、ほんとにやるのか……? た、たかが目薬のために……?」
ピッコロ「言っても無駄だ。サイヤ人の王子として、譲れないものがあるのだろう」
ピッコロ「おいベジータ。高度から落ちる間に目薬が散ってしまう可能性がある。気の膜でガードしたほうがいいぞ」
ベジータ「わかっている……無用な親切だ」
~高度10000m~
ヒュー
ベジータ「よし……! 目薬の野郎、オレの目に入ることになるとも知らず、のんきに落ちていきやがる……!」
~地上~
ベジータ「目薬はここを目指して一直線だ。時間は無い」
クリリン「ほ、本当に死ぬつもりなのか……!? や、やっぱりバカげてるよ……」
ベジータ「どうとでも言え! この赤くなった目を白くするまでは絶対に諦めん……!」
悟空「クリリン、今はベジータを見守ってやってくれ」
クリリン「ご、悟空……わかったよ。……お前らがそこまで言うなら、もう何も言わないさ」
ピッコロ「急いだほうがいい。ベジータ、自分で死ねるのか?」
ベジータ「当たり前だ。自分の胸を貫く程度、造作も無い」
クリリン「俺からしたら、そっちのほうがよっぽど怖いけどな」
ベジータ「目薬が落ちてくるのは……このあたりか。よし……!」
ベジータ「てやぁ!!!」
ザシュッ
ベジータ「うぐっ……! あぁ……! かはぁっ!」
デンデ「ひ、ひえぇ……!」
ベジータ「う、うぅ……」
ドサッ
ベジータ「か、カカロット……か、必ずオレを生き返らせろよ……!」
悟空「ああ。次ぃ生きかえった時はよ、目が真っ白になってるはずだ」
ベジータ「く、クク……た、楽しみだ……ぜ……」
ガクン
デンデ「あっ! そ、そういえば……!」
悟空「ん? なんだよデンデ」
デンデ「この間、界王神様がキビトさんと分離するためにポルンガは使いましたよね? 今、ポルンガは使えないんじゃ……」
ピッコロ「……! そ、そうだった……!」
悟空「いぃ!? ポ、ポルンガつかえねぇんかぁ!?」
クリリン「そ、それじゃあ……」
ピチョン
ベジータ「」
ナレーション『愕然とする悟空たちの傍らで、ベジータの死体の目に目薬は落ちた』
ナレーション『だが、生き返ることができるのは四か月後。果たして、そうまでして目薬をする価値があったのだろうか』
END